キャンバスが一つあるだけ
静かな部屋は目に見えぬ部屋

お好みのイーゼル組み立て
静かに立て置く君のキャンバス
白の四角とは限らない
香り手触り全部君専用

過去の作品に囚われず
新しい絵筆を握り締めて
絵でも文字でも何だって
描く 綴れる 何度でも

キミイロキャンバス 光に翳す
瞳の裏に映す未来は
掴めなくてもいずれ描ける
君はどうやって描く?
キミイロの空間に

塗り潰してぐちゃぐちゃになって
もう描けないと言っているけど
その腕はまだ懸命に
爪痕を残そうとしてる

触れられなくなった作品よりも
握り締められるものが散乱している
乱雑に見える部屋の中にも

キミイロキャンバス 少しだけ覗いたら
前とは違う色が混ざってた
人差し指で懸命に
黄色い絵の具の軌跡を刻んでた

新しい出会いに感動した日
新しい香油をキャンバスに垂らした
床に一滴零れて広がる
波紋が君のイーゼルを濡らす

恋愛を知った日には
枯れない花弁を探して貼った
それでも乾き始めたその花弁に
紅色の絵の具を塗りつけた

キミイロキャンバス キミドリイロ?なんてね
キャンバス通じて出会えた記念に
君の色を少しだけちょうだい

だけど時々どうしても
そのキャンバスが羨ましくなる
叶わない模写を夢想して
吐いた溜息も余白に吸われる

ボクイロキャンバス 自慢できるかな
そう思った日の君の言葉
僕を笑顔にさせるには十分で
その笑顔も僕は描き込んでおいた
キミイロキャンバスキミダケノイロ

ある日真っ白になった君のキャンバス
描いた色々は飛び出していったらしい
翌日君もいなくなって

キミイロキャンバス
君が描いていた証
ボクイロに重ねて
ほんの少し涙を混ぜよう
キャンバスは空の色
キャンバスは海の色
キャンバスは君の色
キャンバスは君だけの色

誰が見なくても誰しもが描く
光にある部屋の それはいつまでも君色キャンバス
こんな街 大嫌い

嘲笑のネオン街が
零時のあたしを追ってくる
終えた汚い一仕事
明日 明後日 醜悪面のお相手
ヒールの音だけ空元気の悪足掻き
臨界点は越えて 廃する下り坂

刹那を与える店ばかり 立ち並んでは光っている
さっき落とした筈の香りが厭らしく嗅覚を突く

お母さん ごめんなさい
貴方より敬うべき人は
この街には 居なかったよ

ギターが弾ければ気分も晴らせるだろうに
街灯の下 開拓者 路上演奏
比較的清くて正しい世界で
生きている 愛すべき人種

手を洗いたい
失ったものに謝るように
呟いてはビル群に呑まれる
コート アクセ 汚れた金色
貢いだ顔 小汚くて臭い顔
呼ばなくては お客様と

お父さん ごめんなさい
貴方より優しい人も
この街には 居なかったよ

義務を背負った腕時計が
飽きもせず指すお迎えの時間
あの日出た家に忘れてしまった
純真な時計は 今何時?
知り過ぎた 関わり過ぎた
分かった時には もう遅かった

ごめんなさい
生きるために仕事をしてます
ごめんなさい
貴方達が反対した仕事です
助けてくれますか 抜け出せない
おとうさん おかあさん

無理でしょう どうせ
感情表現の仕方も知らないし

ネオン街はあたしの自嘲
そっと吹き消し夜を続ける
麻痺した女の性引き摺って
いつも通り 献身的営業
天に一番近い丘
綿雲がふわふわ 晴れ渡る空にふよふよ
ある日の明け方 朝日の輝きと一緒に
小さな竜が 一匹落ちてきた

綿雲の丘には 娘が一人
朗らか快活 働いていた
大きなシーツ干し終え 空の眩しさ仰ぐと
小さな黒い影が 太陽を覆い近づいてくる

翼竜と娘 小さな出会い
娘はそして 竜を飼う娘となる

白い綿雲のような毛並み
腕の中 肩の上 乗せて娘は考える
年月を経た巨大な翼竜が
雄大な翼で天翔る姿

綿雲は流れ 風車塔はのどか
ぽかぽかの晴れの中 二つの時間は共有される

竜は飛ぶことを覚え
毛並みは白く 背は相変わらず小さく
時々娘の傍らを
風と踊るようにくるくる くるくる

二人で
シュークリームを作って
当てもなく散歩して
近くの町まで競争して
すれ違う人に挨拶をして
大きな風車が回るのを眺めて
大きな水車が回るのを眺めて
動物達と戯れて昼寝して
幸せな気持ちで
家にいて 外に出て
いつもいつも 君を抱いて
いつもいつも 君に抱かれて
いつもいつも 笑って笑って

遊んで働いて 時間余ったら丘の上
寝転んで綿雲を見た ほのぼのと時間は宙を漂う

ある日娘が知った事実 翼竜の成長の条件
愛情深きを守るため 竜は広大な翼を広げる
何処吹く風と 傍らの白いふわふわは
ただ眠る 娘も少しずつ眠りの海へ

夢で娘は包まれていた
白みを帯びた銀のヴェール
風を切る翼の音が
大きく深く耳に響く
咆哮 鉤爪 力強く
見えない目 夢の中
銀は悪夢を振り払い
娘を背に乗せ昇っていく
優しい 綿雲の丘を目指して

目覚めたのは明け方
出会ったあの日のような明け方
まだ眠る小さな翼竜の
頭を撫でる 娘の顔の微笑み美しく

そしてまた日々のほのぼのを共に
歌声と鳴き声 丘の向こうへ吹き抜ける

竜を飼う娘
何れ娘は竜を連れ丘を発つ
その瞬間を今は知らず
ゆるやかな時間を幸せに過ごす

綿雲の丘で 竜を飼う娘
美味しい果物ばかり食べて
馬鹿笑いしてた きっといけなかった
今は一人 突然の苦さに
人知れず苦しむ 口の中広がるビターチョコレート

いい様に出来ると蹂躙した世界は
砂糖菓子のおまけ プラネタリウム
三回回して 飽きて疲れて
砕いて踏み潰せば 簡単に革命の支配者

だから初めてだよこんな味
苦くて苦くて舌は痺れて
溶けて広がったチョコレートが
言い訳発する舌を封じる
溶けて溶けて燃え広がって
生まれくるのは招かれざる感情
全身に蔓延 もう吐き出せない
泳がせた舌は苦味ばかり掬う

ご褒美の飴は小さいのに
チョコレートは板一枚
消せない味覚は何かを穿って
記憶へと消化し残留

口直しの罪と罰
嗽で濯いで閉じた口腔
周囲で膨らむチューインガム
欲しいけど 欲しいけどさ

とてもいただけない日常で
餌付け人狙って口開けて
温かなスープを本当は切望
ピアノを弾くのが一番好きだった
君と出会う その時までは 
 
おねだりの仕方は知ってる?
お仕置きのされ方は分かる?
あげた優しさを自ら蹴散らし
君と僕がいれば そこは二人の牢獄
君が内側 無論当然

黒鍵と白鍵を蹂躙
君だけをイジメタイ
閉じた心 寄り添わせて
奏でる音の寂しさすらも
肩を竦めて 言葉に隠す

泣いてる顔が見たいんじゃない
その後の笑顔もちゃんと見たいよ
ただ寄り道の愉しさに
自我を手放してしまうだけ
高貴な遊戯 至極漫然

聴き苦しいトリルの不協
君だけをイジメタイ
毒薬と砂糖の迷宮に
放った君を覗く万華鏡
ほろりと映った 泣き笑う表情

君が在る限り続く愛の挨拶